次世代に打ちのめされてわかった売れそうではなく、うれしいコト
2024年3月に発売されたトキメクおやつ部。「若いお客さまにも手に取ってほしい」とお菓子部門としてはじめて向き合ったM・Z世代の価値観は驚き、とまどいの連続でしたが、その先に新たなバリュがありました。
【バリュを込めた人】
商品開発本部 グロサリー商品部:鈴木
ブランド&コミュニケーション本部 パッケージ制作部:及川
商品開発本部 コーディネーター部:田中
直面するM・Z世代!「おいしい=ほしい」ではない?
“私たちの基準”は思い込みだった
「M・Z世代が大事にしていることって何だろう…?」
開発プロジェクトが発足した際に集められた開発メンバーは、M・Z世代よりも上の世代ばかり。百戦錬磨の経験を持つ開発メンバーがいくら考えても、多種多様な価値観の中で育ったM・Z世代は解き明かせないのでは…。それが開発担当の鈴木が最初に抱いた印象でした。だからこそ「自分たちの思い込みを捨て、直接聞いた意見を大事にしよう」とヒアリングを実施。その人数、200~300人! ここまで聞けばさすがにM・Z世代の何たるかが見えてくるだろう、と思いきや…
聞けば聞くほどいろいろな意見が出てつかみどころがなく、「どういうお菓子が好き?」という質問に対してさらにトドメのひと言が。
「(Z世代)私たちの好きな基準はおいしいかどうかではないかも…」
「(開発メンバーの頭の中)……???、(心の中)ざわざわざわ…」
思ってもみない言葉に、平静を装いながら心の中では動揺しまくっている開発メンバー。そこでようやく全員が悟りました。「あ…、“私たちが考えている基準”は思い込みだったんだね…」と。
共有したいのは「おいしい」より「楽しい」
たとえばSNSにあげるのは、“おいしいものがあって、それを知ってほしいから”だと思っていた開発メンバー。しかしM・Z世代にとって大切なのは、“おいしいよりもまず、知人・友人とシェアして喜べること”、“面白体験として楽しめる・体感できること”。お菓子の楽しみ方も多種多様だということがわかってきました。
軽い昼食代わりに、仕事や授業の一区切りに、ながら食べに。コミュニケーションをとるため、タイパが良いから、などなど。“おいしい”以外にほしい理由がたくさんありました。そう、“3時のおやつは~”はもう遠い昔の話だったのです…。
そんな多種多様な“ほしい”には1種類ではこたえきれないからこそ、リフレッシュしたり、罪悪感なく食べられたり、栄養補給できる“がんばる自分に寄り添うおやつ”と、くせになったり新感覚の味、旅気分で楽しくなれる“みんなとシェアしたくなるおやつ”のコンセプトに分けて、いろいろな種類のお菓子が生まれました。
「(鈴木)私たちが今まで開発・分析・マーケティングにおいて基準にしていたことを大事にしつつも、そのやり方だけだと難しいということがよくわかりました。作りたいのは「M・Z世代に売れそうなもの」ではなく、「M・Z世代がほしいもの」。だから思い込みを捨て今までのやり方に固執せず、とにかく素直に声を聞くことを大切にしようと決めました」
知ってほしいではなく、感じてほしい
ネーミングもパッケージもコミュニケーション
「“がんばる戦士グミ・癒しの魔導士グミ”の名前でパッケージを制作して」と依頼がきて…。聞いたときは“おお、すごいの来たな~!”って思いましたよ(笑)」
と語るのは、パッケージ制作部の及川。トキメクおやつ部もさることながら、“がんばる戦士グミ・癒しの魔導士グミ”、“ありのままの野菜たち”、“漆黒のYOUKAN”など、ひと際目を引くのがシリーズそれぞれのお菓子のネーミングやパッケージ。
「(及川)お客さまが友人・知人同士でお菓子をコミュニケーションツールとして使うように、ネーミングやパッケージって私たちがお客さまへ最初に行うコミュニケーションでもあるんですよね」
そう考えるからこそ、今までのおいしさや栄養など品質の良さをいかに伝えるかではなく、価値観重視のネーミング、パッケージにするという新たなチャレンジをしました。まったく異なるアプローチにさぞかし苦労したのではと思いきや、意外な発見が。
M・Z世代の価値観、意外と遠くないかも!
たとえば、今RPGやファンタジー系のマンガ・アニメが流行っていますが、子どものときにゲームで遊んでいた世代の及川自身にも似た世界観がありました。
「(及川)未知の世代と思っていても、意外なところでつながる価値観もちゃんとあるんだなと感じました。だからこそ今までのような“品質で勝負”ではなく、ネーミング・コンセプト・パッケージ・中身の品質が全部合わさってこそ、“ほしいと思われるもの”ができるということを実感しました」
もちろんうまくいくことばかりではありません。それは「エモい」を意識してフォトジェニックな写真を使ったパッケージを作ったときのこと。自信があったので意気揚々と見てもらったのですが、高校生の反応は…
「これは私たちには子どもっぽいかな」
「(鈴木)ガンッと来ました(笑)やっぱりきちんと聞き続けないといけませんね」
「若いから●●」はNG! おいしいの基準は同じ
第一ではない、けどおいしさも大事
“ありのままの野菜たち”シリーズの中のごま油にんにく味を開発メンバーで試食したときのこと。「にんにくの風味が強くておいしい」と大好評でしたが、
「(田中)お酒をたしなむ開発メンバーには好評でも、まんまにんにくの商品なんて、においがすごくてZ世代は食べないよ! とずっと思っていたんです…」
「(鈴木)好評なのはうれしいんですけど、私も心の中では、皆M・Z世代じゃないんだよな~…、って思っていました(…失礼)」
ところが発売イベントで意外な結果が。
「(田中)Z世代に人気のインフルエンサーが、数ある商品の中で“ごま油にんにく味がおいしい!”って言ってくれて。 開発メンバーにはすみませんでした!って感じです(笑)」
「(鈴木)最初にヒアリングしたときに“おいしさで選んでいるわけじゃない”と聞いていましたが、それが第一ではないけどおいしさにも敏感、という意味だったんですね。おいしさも大事だという価値観は、結局世代が違っても同じだということもわかりました」
想定外の「ほしい」の声も!
それは発売後の反響にも現れていて、小さいお子さまがいる子育て層からも「子どものおやつにしたい」という声が。
「(田中)元々、健康が気になりはじめるM世代のお客さま向けだったのですが、お子さまのおやつというご要望は想定外でした」
“漆黒のYOUKAN”では、事前にM・Z世代にモニターしつつ、さらに発売後も社内のZ世代にリサーチ。「チョコようかんはおいしい」という反応をもらうなど、古いものでも少し仕様を変えると意外にも受け入れられることもしばしば。今では開発メンバー以外にも試食して声をもらうことを意識するようになりました。
「(鈴木)手厳しいご意見もあるけど、言ってもらった方がありがたい。愛情を込めてご指摘いただいているので、うれしい。自分たちの想定外のご意見をいただける方が、よりおもしろい、他社にないような“ほしい商品”が生まれるので、今後もそういった意見を大事にしていきます」
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